2014年5月20日に,各地で学習塾を経営する進学会が消費者庁より景品表示法に基づく措置命令を受けました。
参考:「株式会社進学会に対する景品表示法に基づく措置命令について」
平成23年(2011年)5月23日から平成25年(2013年)3月11日までに配布したビラで,あたかも、対象役務に係る学習塾における講師の98パーセントが国公立大学・大学院出身者で あるかのように示す表示をしていた点が問題視されました。
実際には,対象役務に係る学習塾における講師のうちの国公立大学・大学院出身者が 占める割合は、約14パーセントにすぎないものでした。
北海道新聞によると,次のような事情であったようです。
全国の講師1548人について「国公立大出身98 %」などと不当 に表示 したという。実際は国公立大を卒業した出身者は14・6%だけで、在学中のアルバイトが約83・5%を占め、合計が98%だった。
国公立大出身の講師98%→実際は14% 進学会で不当表示 在学生バイト含め広告記載
一応魚拓も載せておきます。
北海道新聞の記事のよると,全国に講師が1548人いることになります。
ところで,進学会は上場企業であるため,有価証券報告書を提出しており,有価証券報告書には,期中の従業員数が連結・単体で記載されます。
といわけで,消費者庁が指摘した期間の進学会の有価証券報告書に記載された塾関連事業に従事する連結ベースの従業員数を見てみましょう。
計算日 | 従業員数 | 臨時従業員数 | 合計 |
---|---|---|---|
平成25年(2013)3月31日現在 | 276 | 1161 | 1437 |
平成24年(2012)3月31日現在 | 288 | 1217 | 1505 |
平成23年(2011)3月31日現在 | 280 | 1177 | 1457 |
塾関連事業に従事している従業員全員が講師だとしても1548人にはたりません。しかし,このあたりは,有価証券報告書に記載するんが期中平均人数ということや,北海道新聞に乗っている数字がのべ人数かもしれないということで,説明がつくのでしょうと,力強く主張したいところです。
講師が全員で1548人いたということを信頼して,内訳を考えてみましょう。次の表のような内訳になります。
区分 | 割合 | 人数 |
---|---|---|
①国公立大学の出身者 | 14.6% | 226人 |
②国公立大学の在学生 | 83.5% | 1293人 |
③非国公立大の出身者または在学生 | 2% | 29人 |
合計 | 100% | 1548人 |
在学者である②は,臨時従業員にあたると考えられます。講師1548人中,有価証券報告書の従業員数に該当するのは,①と③の一部ということになります。講師1548人に対する割合上では,進学会の正規従業員である講師は,最大で255人だと考えられます。
ざっくりとした計算で,塾関連事業に従事する進学会の従業員のうち,1割程度は講師ではないと推定できます。この人たちは,新規出店計画の立案やビラの作成などに従事している人ということでしょうか。
なお,仮に,対象となった3年間,毎年1548人の講師がおり,正規従業員である講師の数が255人だと仮定すると,講師の数と,実数値のズレは次の様になります。
計算上の 正規従業員講師数 | 有価証券報告書上の 臨時従業員の人数 ()内は前表の②との差 | 報道による講師数の合計 | |
---|---|---|---|
平成25年(2013)3月31日現在 | 255人 | 1161人(-132) | 1548人 |
平成24年(2012)3月31日現在 | 255人 | 1217人(-76) | 1548人 |
平成23年(2011)3月31日現在 | 255人 | 1177人(-116) | 1548人 |
実際には,大学・大学院を卒業・終了後にもアルバイトで塾講師を続ける人もいると考えられますので,①の226人全員が進学会の正規従業員であるとは限りません。実際の正規従業員である講師の数は,255人よりも少ないと考えられます。したがって,アルバイト講師の数のズレももう少し大きいと思います。
学生バイト講師の数がやっぱり足りない気がしますが,そこは,期中平均とかのべ人数とか,いろいろあるのだと思います。まさか,教育産業に関わる上場企業が数を数え間違えたり,数字をチョンボしていることはないでしょうから。
講師のうち8割以上が学生アルバイトとわかっただけでもアレかもしれません。保護者が払っている授業料と学生向けアルバイト求人情報にでている時給の差を見てみるのも面白いと思います。
なお,著者は,進学会が,北海道教育大学の学生・出身者を北大の学生・出身者と言いはったり,宮城教育大の学生・出身者を東北大学の学生・出身者と言い張ったしているしていることは決してないと固く信じております。
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